翻訳屋佐吉の生活と意見関東を離れ、北陸に古民家を購入したとある翻訳屋の田舎暮らし事始めと日々のつれづれ。 

この記事に含まれるタグ :
震災  自分語り  

スポンサーサイト

--/--/--[--]《 スポンサー広告 》
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

http://countrytranslator.blog.fc2.com/?overture" target="_new edit

--/--/-- --:-- | Comment (-) | Site Map | Home | Page Top

あれから4年

2015/03/11[水]《 よしなしごと 》
 その頃、佐吉たちはまださいたまに住んでいた。佐吉は病気で入院中の細君を見舞いに、さいたま市郊外の田園地帯を自転車で病院に向かっていた。実を云うと、そのとき、佐吉はすぐには揺れに気づかなかった。ちょうど舗装の荒れた農道を走っているところので、砂利が浮いているのか、あるいは見た目以上に路面が荒れているのか、くらいにしか思わなかったのだ。その後、農作業をしていた爺さんが不安げに周囲を見渡しているのを見て、佐吉はようやく地震だと悟った。少し行くと、幅5mほどの用水路の水がさながら防波堤に打ち寄せる荒波のように、左右に交互に激しく水しぶきをあげていた。病院では、一部非常口の表示灯が落ちるなどの被害はあったが、幸い大事には至らず、康文と互いの無事を確認したのち、余震がおさまるまで、ほかの入院患者や付き添いの人たちと一緒にロビーで待機することになったのだった。

 当時、佐吉たちはネットで古民家を物色したり、現地に赴いて目ぼしい物件を見て回ったりしているところだった。ちなみに、その頃引っ越し先に考えていたのは北関東か長野、あるいは福島。富山に引っ越そうなどとは夢にも思っていなかった。引っ越し先の候補には、のちに避難区域に指定される福島第一原発からさほど遠くない物件もあった。入院していなければ、ちょうどその時期に温泉旅行を兼ねて彼の地に見学に行くつもりだった、だから、入院することになったのはきっと神様のお導きだ……と康文は云う。細君は特に信心深いわけではないのだが、しばしばそういう考え方をする。ともあれ、ほんのちょっと巡り合わせが違っていれば、佐吉たちが直接被災していた可能性があったことは確かだ。そう考えると、震災は決して他人事ではない。

 実は、いま佐吉たちが高岡で暮らしているのも震災と無関係ではない。ご承知のとおり、震災後、関東では何度か計画停電が実施された。しかも、一時はそれが夏以降、さらには冬まで続くとも伝えられていた。当初、佐吉は、停電中はバッテリーで駆動できるノートPCで作業をすれば良いと考えていた。だが、実際にやってみると想像以上に不便で話にならない。こんな状況がこの先ずっと続いたら確実に仕事に支障を来す。こうなったら、しばらく関東を離れて高岡の康文の実家に「疎開」しようか、と二人で話し合った。康文が義母にその話をすると、義母は快く承諾してくれた(実際には話し相手が欲しかっただけだろうと康文は推測しているが)。そうして5月にそのシミュレーションを兼ねて高岡に一時帰省。結果的に計画停電はほどなくして終わり、「疎開」の必要はなくなったのだが、在郷中に「このまま康文の実家を拠点に富山でじっくり家を探すという手もありかな」という話になり、今に至るのである。

 あれから4年。その間に佐吉が手掛けた案件にも震災絡みのものが少なくない。除染装置の取説、被災地の復興状況に関する調査報告書、津波防災研究に関する資料、防災林の再生に関する報告書、震災瓦礫の処理に関する文書……。そうした案件に接するたびに、実に多くの人々が、実にさまざまな形で復興に関わっているのだと実感する。と同時に、その規模の大きさ、分野の広さに目眩にも似た感覚を覚える。微力、と云うのさえおこがましいが、佐吉自身も、それらの案件を通じて多少なりとも復興のお手伝いをしているのだと思うと身の引き締まる思いがする。TVの特集番組やネットの特集記事などでは「風化させてはならない」といった云い方を目に、あるいは耳にするが、風化するどころか、復興はまさに現在進行中、いや、むしろ端緒についたばかりと云うべきだ。おそらく今後も、復興関連の案件に携わることが幾度となくあるだろう。震災で亡くなられた方を思って黙祷するのも大事だろうが、それ以上に、そうした仕事を確実にこなしていくことが、自分に「できること」であり、「すべきこと」なのだと佐吉は思う。
関連記事

この記事に含まれるタグ : 震災 自分語り 

http://countrytranslator.blog.fc2.com/blog-entry-139.html edit

2015/03/11 14:56 | Comment (0) | Site Map | Home | Page Top
翻訳者ネットワーク「アメリア」

Comments

コメントを投稿する 記事 : あれから4年


  設定するとあとで修正や削除ができます。(任意)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。