翻訳屋佐吉の生活と意見関東を離れ、北陸に古民家を購入したとある翻訳屋の田舎暮らし事始めと日々のつれづれ。 

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思いがけない収穫

2014/02/10[月]《 日記 》
 先日、珍しく実家の母から電話があった。何用かと思ったら、細君がアメリアの会誌のコピーを郵送していたらしい。翻訳トライアスロン2013の総合結果と上位入賞者の「喜びの声」が載った号だ。電話のむこうの母の声はいつになくうれしそうだった。

 以前にもお話ししたとおり、佐吉は2009年に、早期退職者募集に応募して会社を辞め、フリーランスになった。もちろん、それは自ら望んだこと、というより、募集は願ってもないチャンスだった。佐吉は微塵も迷うことなく、待ってましたとばかりに応募し、今の仕事に就いたのだった。

 しかし、佐吉の親戚筋はそうは思っていなかったようだ。鈍感な佐吉はつい最近になってようやく気づいたのだが、叔母や従兄弟たちは、どうやら、佐吉が意に反して会社をリストラされ、その後どこにも再就職できず、仕方なく翻訳で糊口を凌いでいると思っていたらしい。あるいは、富山に移り住んだのも、世間体が悪く、知人と顔を合わせたくないから、くらいに思っていたのかもしれない。正月やお盆に親戚が集まった折にも、佐吉の近況に話が及ぶと皆決まって口数が少なくなった。今にして思えば、まるで腫れ物に触るようだった。

 実を云うと、親戚ばかりでなく当の母親もそんなふうに思っている節があった。無論、会社を辞めるにあたって、母には退職を決めた経緯や今後の計画をきちんと説明した。母もそのことを理解しているようだった。しかし、それで母が素直に納得したとは考えにくい。老母は、どちらかと云えば保守的な、古い体質の人間だ。立派な会社に入って立派な役職に就くことがすなわち出世するということ、フリーランスなどというヤクザな商売は、まっとうな社会からドロップアウトしたダメな人間のやること、くらいに思っているところがある。いや、母に限らず、世の中の大半の人がそういう見方をしていると思う。

 もちろん、佐吉自身は他人にどう思われているかなどまったく気にしていない。上に云った世間一般の自由業に対する見方を承知のうえで、敢えてこの職業に就くことを択んだのである。だが、母はそうではない。一度入った会社を辞めるなど世間様に顔向けできない恥ずかしいこと、という意識はその後も変わらなかったらしく、佐吉が会社を辞めたあと、しばらくは親戚や近所の人にそのことを伏せていた。

 そんな母にとって、佐吉の顔写真とコメントが載ったアメリアの会誌は、息子がまっとうな仕事に就いていることを示すひとつの証左になったようだ。少なくとも、翻訳が人目をはばかるようなみじめな仕事ではなく、社会的に通用している仕事だということ、そして、息子がその世界で多少は評価されているということを、ある程度理解してもらえたようだ。

 老母はきっと、親戚や近所の人にそのコピーを見せびらかすだろう。この成績がどれだけスゴいことなのか、あるいは、どれだけ取るに足りないことなのか、おそらく老母は理解していないし、親戚や近所の人たちはことさら何のことだかわからないだろう。そんなものを見せられたところで、「すごいねえ」とか何とか儀礼的に驚いてみせるくらいで、特に関心も持たないだろう。けれど、そうすることで多少なりとも母の胸のつかえが下りるのなら、それはそれでいいかな、と思う。昔の佐吉なら「みっともないからやめろ」と止めただろうが、今は逆に、周囲にウザがられるくらいに自慢すればいいと思っている。

 このイベントで1位になったからといって、特別良いことがあるわけではない。誰かに褒められるわけでもないし(老母以外で喜んでくれたのは細君と義母と義姉くらいのものだ)、翻訳会社からオファーが殺到するなどということもない。わずかに数万円相当の賞品と小さな自己満足が得られるだけだ。いや、元よりそのつもりで参加しているのだから、そのことに何ら不満はない。佐吉にとっての翻訳トライアスロンはそれ以上でも以下でもない。しかし、老母がこの結果に喜んでいるのであれば、それは思いもよらない収穫だ。これによってわずかでも親孝行ができたのだとすれば、それはちっぽけな自己満足などよりはるかに意味のあることだ。もっとも、何だかんだ云っても、いちばんおいしいのは賞品の椅子なんだけどね(笑)。
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2014/02/10 13:57 | Comment (4) | Site Map | Home | Page Top
翻訳者ネットワーク「アメリア」

Comments


かわいいお母様ですね!

わあ、よかったですねえ。
お母様も具体的な証明みたいなものを見た感じで
ほっとされたんですね。
とてもかわいらしいお母様ですね。

男性でフリーランスに転職するのは
やはりかなりの思い切りが必要かと思いますが、
佐吉さんはいつも案件ぎっしりの売れっ子トランスレーターなので
とてもよい決断だったのですね。
高岡に移住するという思い切った動きもできたわけですし。

私はフリー5年目に入り、
なんとか収入が安定してきましたが、
まだ大黒柱にはなれません。
仕事を受けすぎるとクオリティが下がりがちだし、
クオリティにこだわると売上が減るしで
いい塩梅で仕事するのが難しいです。

フリーは忙しい人に仕事が集中しますね。
それはつくづく感じます。
佐吉さんの仕事ぶりを聞くと
心強くなります。
お忙しいかと思いますが、
更新楽しみにしています!
富山の話もいつか教えてください。

マリママ |  2014/02/12 (水) 17:38 No.100


コメントありがとうございます

コメントありがとうございます。

もっとも、あまり持ち上げられるとかえって恐縮してしまいます。佐吉が常日頃忙しそうにしているのは、もっぱら仕事が遅いからであって、決して超人的な量の仕事をこなしているわけではありません (^、^;

仕事の質についても(あまり大きな声では云えませんが)心底納得したうえで納品している案件など滅多にありません。大抵、「これでいいだろ」、「こんなもんだろ」とどこかで妥協、というか、見切りをつけて納品している、というのが実情です。

たしかに、量をこなそうと思えば質が落ちるし、必要以上に質にこだわると量がこなせなくなる。そのバランスは難しいですね。上手くバランスを取りつつ、できれば少しずつでも両者を改善していきたい、と私も常々思っているのですが、これがなかなか……。それについても、いずれあらためてここでお話ししたいと思います。

私には他人様に自慢できるものなど何ひとつありません。ですが、だからこそ、ウチのブログに存在価値があるとすれば、それは、そんな奴がどうにか翻訳で食っている様を晒す(?)ことではないかと思っています。それが、ここを訪ねてくださる方それぞれにとって何かの励みになれば、私にとってもこんなにうれしいことはありません。このところずっと不精していましたが、今後はこっちの作業効率(?)も上げて、仕事以外の話題もアップしていきたいと思います。これからもよろしくお願いします。

佐吉 |  2014/02/13 (木) 19:05 [ 編集 ] No.101


はじめまして

佐吉さん
はじめまして。aikと申します。
翻訳者の方のブログを検索している折、こちらに辿り着きました。
同県内に優秀な翻訳者の方がいらっしゃることを知り、コメントさせて頂いた次第です。
ブログの内容から察するに、私の会社も佐吉さんのお世話になったことがあるようです。
私の会社では翻訳を専門にする職場がないので。。

私自身、客先提出資料を英訳化する仕事もあるため、佐吉さんのようにアメリアとはいきませんが、仕事・子育ての合間を縫って、何とか自らのスキル向上を目指しています。
初受験で工業英検1級を取得できたことで、少しだけですが自分の努力が報われた気がしています。
研鑽すべきことが多々ありすぎて、まだ翻訳を齧っている程度なので、自分の力が一線の翻訳者の方々に比肩するなどとは. 微塵も思いませんが。。

この先、自分も翻訳の道に進むことができたらと思います。
これからもブログ拝見させて頂きます。
寒い日が続きます。ご自愛下さい。

aik |  2014/02/15 (土) 20:52 [ 編集 ] No.102


はじめまして

aikさん、はじめまして。コメントありがとうございます。お返事がすっかり遅くなってしまい、大変申し訳ありません。

aikさんは翻訳者を目指されているとの由。佐吉は決して優秀な翻訳者ではありませんが、それでも翻訳を生業とする者のひとりとしてアドバイスの真似事をするとしたら、まず云いたいのは、翻訳は、学校に通ったり通信講座を受講したりせずとも、いつでもどこでも学ぶことができる、ということです。以前にもここで触れたことがありましたが、佐吉は翻訳学校に通ったり誰かに教わったりということをせず、もっぱら技術屋として現場で日英のさまざまな文書に触れることによって翻訳のスキルを身に付けました。そして、結果的にその方が実りが多かったと感じています。

それについては、またあらためて思うところをここでお話したいと思っています。それが何かの参考になれば幸いです。aikさんの今後のご健闘、ご活躍を陰ながらお祈りしています。

佐吉 |  2014/03/02 (日) 16:48 [ 編集 ] No.103

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